お勉強:窒素施肥設計

今回の記事はお勉強系です。

植物が欲しがる栄養分の中で、多量要素と言われるのが、いわゆるNPKです。
N・・・窒素。P・・・リン酸。K・・・カリウム。
そして中量要素、Ca・・・カルシウム。Mg・・・マグネシウム。
加えて微量要素が諸々必要です。

どれが欠けても植物体内での反応が完結せず、不足症状が出てしまいます。
あるいは土壌中に多すぎても、過剰害が発生します。

さて本題。
農家、それも砂丘地のメロン生産者にとっての悩みの種は「いかにして適切に窒素施肥するか」です。
欲しがる時に、欲しがる株に、欲しがるだけ与えなければいけません。

小林直太郎農園 理論上の施肥

小林直太郎農園 理論上の施肥

グラフは、メロンが要求する窒素量の変化に合わせて施肥を設計した一例です。
(縦軸の数字に意味はありません。横軸は施肥日からの経過日数近似です。)

苗に豊かな土地と思わせる為、スターターとして燐硝安を入れておきましょう。硝酸態窒素はカミソリの切れ味で肥効が出ますが、一瞬だけです。そして割と高価です。

メインに硫安を据える農家は多いです。
アンモニア態窒素は微生物によって2段階ほど処理され、硝酸態窒素に変わります。
コストの安さもメリットです。

底上げ役の被覆尿素は樹脂被覆が水分等で破れて中身がジワリと出てくるハイテク資材です。
漏出タイプやピーク日を任意に選べるので、「机上では」大変に使いやすい肥料です。
尿素も微生物によって数工程の処理がなされ、硝酸態窒素に変換されます。
グラフではシグモイド型の70日タイプを使っています。

これに遅効性のなたね粕を加える形としました。
後半、特に果実の形ができてからの窒素源は、有機物の分解から始まる微生物の活動によってじっくりと供給されます。
有機物で味が決まる、と主張する農家が多いのはこのためです。

被覆尿素を使わず、後半はなたね粕に一任!としたい所ですが、有機物を入れすぎると「良くないガスが栽培途中でいろいろと」発生しますので、程々にしておきましょう。

逆になたね粕無し、被覆尿素主体にするとコストがエラい事になります。
高いんです、コーティング肥料。
地温の影響を受けやすい肥料でもあり、10℃違うだけで発現ピークが数週間ズレたり、発現量が50%以上増減します。
理にかなっているので、ハマれば最強なんですけどね。

追肥には明確な目的(果実の肥大など)があるので、たとえ曇天でもガツンと効いてくれないと困ります。
各種形態の窒素に加え、アミノ酸も与えておきましょう。
また、追肥を計画に組み込む事で被覆尿素やなたね粕の発現ブレを補正する事もできます。
ちなみにアミノ酸は超高価資材です。

堆肥については、含まれるP・K・Ca・MgがNに対してケタ違いに多く、これらの過剰投入を避けるため、また「良くないガス問題」もありますので上限がおのずと決まってきます。

実際には何種類も肥料を使っていては散布の手間なので、いわゆるNPK配合肥料や品目専用肥料を主体に使う農家が多いです。
堆肥施用を考慮していないものがほとんどで、堆肥を併用するとほぼ間違いなくPKやCaが過剰になります。砂丘農家としては手間をとるか施肥バランスをとるか土づくりをとるか、家々の思惑で個性がでる所です。

上記はあくまで理屈です。
当農園の施肥はやや異なり、有機寄りというか、地力由来というか、土壌微生物活用というか、そんな感じです。
〇〇農法、なんて大層なものではなく、適量の範囲で化学肥料も使います。
砂畑でメロン作るならアレを足してコレを引いて、そんな試行錯誤を長年繰り返して得た、まさに「結果論」を基にしています。

土づくりは農業の一番面白い所かもしれない、最近はそう思っていたりします。

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