大前提として、細菌感染に散布型の農薬は効かない。
べと病やつる枯れ病は菌由来であるため殺菌剤が効果的だが、現在のところメロンえそ斑点病に効く殺細菌剤は存在しないようだ。
この時点で生産者ができることは予防しかない、となる。
メロンえそ斑点病はMNSVとも呼ばれ、他の菌に便乗する形でメロン組織に侵入すると考えられている。実際においてはまず”細菌の運び屋”である菌類の密度を下げ、同時に”菌の水先案内人”であるセンチュウ類の密度をさげるという包括的な予防策が必要と言える。
庄内地区のメロン栽培において、MNSVに効果的とされるクロルピクリン処理を導入している生産者は少ないようだ(資材屋談)。コスト、人体有害性、被覆の手間、などが主な理由だろう。
結局のところ、どんなに手を尽くしても細菌をゼロにはできないし、誰の畑でも必ず被害株が出ているという集団心理が危機感を弱めてしまっている。
加えて、例え被害株であっても手厚いケアによって見た目・食味ともに問題ないメロンを収穫できてしまうという実績、またそれを腕の見せ所としてしまう風潮が、深刻さを軽視させてしまう原因になっているように思う。
メロンえそ斑点病が発病すると、葉脈に沿って枝状に枯れ込む。
逆にべと病は葉脈以外の部分を黄化・壊死させる。
同時に発病した場合、数日で葉が溶けて無くなってしまう。
過湿も病害増長の要因であるため、多雨年であった2013年には”事故現場”の様相を呈した畑もちらほら見られた。
被害株にはおおまかに2種類の特徴が現れる。
古い葉が葉脈に沿って枯れ込むタイプと、新葉に無数の点枯が現れるタイプである。
前者は、栽培後期の発病であればケア次第で実際被害を小さく押さえ込めるが、後者の場合は大抵の場合手遅れである。
秋冬に休耕しても毎夏メロンであれば実質的に連作であり、畑を休ませた事にはならない。
せめて麦でも撒き、土壌中の菌拮抗を誘ってMNSVの密度を下げるべきである。
MNSVは汁液の接触感染力が強く”人が触るほど広がる”と言える。
究極的には、全資材を毎年使い捨てるか煮沸消毒し、被害株とその隣接株をすべて抜去する事になるが、それでは営農が成立しないだろう。
楽観的情報として、土壌病害は菌密度が一定値を下回ると沈静化するとされている。
指数関数的に被害が軽減されるのであれば、少しの気づかいで被害ゼロまで持っていけるかもしれない。
これは盲点だったが、市販のアルコール消毒液には殺細菌力があるという。
まずは意識改革の手始めとして、ポンプ式の殺菌アルコールでも置いてみるのはどうだろう。